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【学習会報告】「労働組合と憲法と民主主義」1/3「労働組合は単なる思想団体ではない」

2019年1月7日 横浜地区労は組合の旗を開き活動を開始する「赤旗びらき」を開催

第一部で開催した情勢学習会を紹介します。

 

テーマ「「労働組合と憲法と民主主義」~労働組合とはなんなのか~

講師:松村比奈子(非常勤講師組合委員長・憲法学者)

 

 

 

私たちの組合は、主に首都圏の大学非常勤講師が加入している組合で、現在650人くらい組合員がいます。5年前までは300人前後でしたが、労働契約法改正後の無期転換権実現への攻防戦の中で組合員が飛躍的に増えました。労働組合の組織率は全体的には減らしてきていると言われるのですが、その中でなぜ増やしているのかとよく聞かれます。そこでその理由の一端をお話しし、皆さんと一緒に戦っていきたいなと思いながら、今日はお話をさせていただきます。

まず皆さんのお手元のレジュメを参照してください。私の専攻している憲法学の立場からみて、労働組合とは何なのか。皆さんが日常、一所懸命頑張っていらっしゃる労働組合を、大きな視点でとらえるとどんなことが言えるのか。

 

1.労働組合は単なる思想団体ではない

まず初めに、労働組合は単なる思想団体ではないということです。私たちは労働組合の活動をしていると、心無い言葉をかけられることが多々あります。例えば、「アカ」だとか、過激派だとか、さすがにテロリストはないにしても、思想的にも過激な人たちだというような、非常にステレオタイプな偏見をもった言葉をかけられるのですが、実は労働組合は、特定思想の推進団体ではないのです。明らかに憲法上の出自が異なるので、そこを皆さんにお伝えできればと思います。

例えば政党と労働組合はどこが違うのか。憲法上、政党は憲法21条の集会・結社・表現の自由に由来する組織です。しかし労働組合は憲法28条に由来する団体です。つまり憲法27条の勤労の権利という人権を保障するための組織なんですね。労働組合というのは、そういう生存に関わる重要な人権を守るよう、憲法に定められた特別な団体です。それが労働組合の役割です。自分たちが信じている特定の思想や信条を主張するための団体とは根本的に違います。

例えば労働組合法という法律があります。労働組合はこの労働組合法に準拠しているわけですけれども、その第2条に労働組合の定義があり、2条の4で「主として政治運動又は社会運動を目的とするもの」が除外されているのは、そういう理由です。つまり私たちの労働組合は、広く民主主義一般に不可欠な、人権思想を推進するための活動をしているんだ、ということを労働組合法でもはっきりとうたっているということです。

ですから、労働組合が活躍して加入者が増えていくことが、実は日本の人権が広がるという事に連動しています。皆さんも労働組合をさらに活性化させて、人権を守る運動を広げていっていただきたいと思います。逆に言うと、今、労働組合の組織率が全国的に低下しているのは、残念ながら日本の人権の状況が悪くなっていることを意味しています。

では労働組合が推進の目標とすべき、人権とは何なのか、人権についてのお話をしたいと思います。レジュメの2番目にある「人権とは何なのか」の部分です。全国の小中学校でも、もちろん人権教育というのはしています。例えば人権にはたくさんの種類がありますよと説明して、表現の自由、経済活動の自由とか、社会権や参政権など、人権を諸項目に分類しそれを暗記するのが教育の一部になっています。しかし人権の意味内容は、実は非常に単純です。人権というのは人の権利です。「人間でありさえすれば誰もが等しく保障される」、これが人権の定義なんです。

実は、私も子どものころにこう教わったわけですが、「いやそんなことはないだろう、実際人間であればみんな同じに保障されるなんて、生活の中でも見当たらないし、あり得ないだろう」と。しかし、それこそが実は民主主義の本来の目標なんです。そこを理解していただかないと、人権の意味が理解していただけないのではないかと心配しています。

⇨つづく