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【学習会報告】「労働組合と憲法と民主主義」3/3「労働組合の目標とは」

2/3のつづき

 

3.労働組合の目標とは

そこで、労働組合からみた人権の推進っていうことなんですが、先ほども言いましたように、労働組合というのは人権保障のために憲法が定めた組織です。特定の思想信条を推進するのではなく、まさに民主主義そのもの、人権そのものを推進するのが私たち労働組合の仕事です。

労働組合の意義について説明する前に、主権について説明します。日本国憲法の三原則の一つに国民主権がありますが、主権というのは、元々は近代の絶対君主が持っていたオールマイティーな権利、つまり究極の特権なんですね。これを国民みんなが持つというのが国民主権の原理ですが、そうすると今、この日本には1億2千700万人のルイ14世がいるということになります。つまり絶対君主がそれだけいる。となると、例えば政治をやるときに、誰かが誰かに命令するってことはできません。全員が絶対君主ですから。そこで必要になってくるのが「同意」です。相手が同意すれば、政治はできる。政治をやるときに命令することはできないけれど、同意させることはできる。国民の同意なくこの社会を動かすことができない。だから同意は民主主義の非常に重要な要素です。同意のない権力は、民主主義では正当ではない。だからこそ、正しい手続き(=事前の同意)によって選ばれた権力者は、公約の範囲内で権力を行使できるわけです。

となると同じ国民である以上、労働者と使用者との間にも同意が必要です。契約というのは本来対等な両者が同意によって結ぶものですが、残念ながら労働契約においては、使用者の立場が強く労働者が弱いという、いびつな関係です。そこで対等にするために、一人じゃなく皆で団結して交渉する権利を与えましょうというのが、憲法28条の趣旨です。つまり労働者にその意味での特権を与えてかさ上げをするわけですが、その目標は、使用者と対等に交渉し、そして対等な立場で同意することであり、そのために存在するのが労働組合です。結局のところ、平等の実現が労働組合の意義といえます。

そこで今振り返ってみますと、全国的に労働組合の組織率が下がっているというのが報道でもいろんなところでも言われているんですが、その原因の一つは「労働者の中に格差が生まれている」ということです。端的に言うと「正規労働者と非正規労働者」の待遇格差ですが、実際、私たち非常勤講師組合が感じるところでは、大学の専任教職員組合が非常勤講師や非常勤職員のために頑張ってくれるかというと、なかなかむずかしい。何故かというと、「正規の人たちが今の処遇でいられるのは、非正規がいるから」と考えているのではないか。つまり、非正規労働者を人身御供にして正規労働者が生き伸びているという「誤解」が正規教職員の中にあります。そのために、非正規労働者を犠牲にすることで自分たちの待遇の温存を図っていく、と勘違い、私は勘違いだと思うんですけども、しているわけです。

ところが差別の構造というのは皆そうですが、労働者の一方をえこひいきして他方を差別すれば誰が漁夫の利を得るかというと、使用者です。つまり、正規と非正規を対立させることで協同する力を削ぎ、労働組合の力を削ぐことによって誰が一番利益を得るかというと、それは使用者なわけです。そういった正規と非正規の分断を、そのままにしていいのかどうか、今こそよく考える必要があります。労働組合の目標というのは、先ほど言ったように、平等の実現です。非正規を犠牲にすれば正規は守られるという考え方はやめた方がいいと思います。なぜならば、より劣悪かつ低賃金で働く人々が増えれば、正規の人たちは逆に「正規なんだからもっと働くべきだ」とさらに過酷な環境に追い詰められていく。それが今の「過労死」という現状だと思います。

 

そういう意味で、自分たちよりも弱い立場の人を放っておいてはいけない、或いは自分たちより劣悪な労働環境を絶対に許さない、という気持ちで全ての労働者が団結し、労働組合を推進することが、使用者と戦う大きな力になると思います。正規と非正規が力を合わせれば、今までにない大きな力が生まれるはずです。私たち非常勤講師組合は、今非正規の中にもある格差に目をつけ、それを無くすよう戦っています。また正規教職員組合と協同することで、最近、いくつかの大きな成果を得ました。今後全国の労働組合が力を入れるべきは、いま広がってきている非正規労働者の方々を何とか取り込んで、絶対に自分たちよりも劣悪な環境にしないと、一致団結して戦うことではないでしょうか。また非正規労働者の多くは女性です。労働組合の活動が活発になれば、世の中に自然と平等が広がっていくのではないでしょうか。私たち非常勤講師組合もぜひこれから一緒に皆さんと平等を目指して頑張っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。(完・文責地区労事務局)