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中労委が復職を学校法人河合塾に命令

≪中労委命令➡委託契約でも労働法適用≫

佐々木信吾さんの復職を学校法人河合塾に命令。

 

【事件の概要】

2013年に労働契約法が改正され、有期契約でも「5年勤務したら無期転換への申込みができる」ようになりました。しかし、全国展開する大手予備用河合塾では1020年と契約更新してきた有期雇用の職員180人(大半は女性)を2013年に雇止めしました。いわゆる「無期転換」阻止です。

既に河合塾ユニオンで役員をしていた数学講師の佐々木さん(横浜地区労議長)は同僚の女性職員に「先生、助けて!クビになりそうです。」と相談を受け、厚生労働省発行の無期転換制度を解説したリーフレットを、休憩時間に2名に手渡しました。もともと河合塾では文書配布は自由でしたが、これを知った塾側は「違法な組合活動である」として、24年勤務した佐々木さんを2013年度限りで雇止めにしました。

河合塾ユニオンは2012年に愛知県労働委員会に別の組合員の雇止めについて、狙い撃ちだとして不当労働行為救済申立を行っていましたが、役員の首切りを受け、組合は追加で救済申立書を提出し、愛知県労働委員会は2016年に佐々木さんを復職させるよう命令をだし、労組法7条1号【不利益扱い】、2号【団交拒否】、3号【支配介入】すべての違反を認定しました。

  河合塾は中労委(中央労働委員会)に再審査を申し立てましたが、20215月、中労委も愛知県労働委員会の命令を支持し、再度佐々木さんの復職を命じました。

冗談のような話ですが、《厚労省作成の書面を同僚に手渡したらクビにする》ことの是非が厚労省(中央労働委員会)で争われたのです。

【委託契約でも労働者】

河合塾の主張のもう一つの柱は【佐々木は業務委託契約だから労働者ではない。労働者でないから、契約するかどうかは自由である】というものでした。既に最高裁判決で「労働者性は契約の名称でなく労働の実態で見る」スタンスは確立しており、愛知県労働委員会では【佐々木組合員は労働者である(よって労働法の保護がある)】と認定され、中労委では更に進んで佐々木さんだけでなく、【委託契約者は労働者である。よって佐々木氏も労働者である】と広く認定しました。

横浜地区労に寄せられる労働相談のなかでも「労働者でないから」として使用者責任を回避しようとする経営者がコロナ禍で増えているように感じています。今回、職場の非正規雇用「全体」について労働法の適用対象になると中労委が判断したことは、争議のたびに労働者性を否定して時間稼ぎ(兵糧攻め)しようとする世の使用者たちにリスクを負わせ、「大きなブレーキとなる」はずです。

【引き続きご支援を!】

 

行政(労働委員会)での判断はこれで決着しましたが、河合塾は国(中央労働委員会)を被告として新たに行政取消訴訟を提起しました。佐々木さんは組合員や支援者らに感謝を示しつつ、「ここまで来たら勝ちきって、非正規(正規でない人間)などという言葉が死語になるような判決を取りたい」と意気込んでいます。